貝の隅っこ

話を聞く副業をしています。 初回無料、2回目以降3000円~。詳細は最初の記事にて。

乳がん忘備録【39】

婦人科検診も無事に終わって、ようやく人心地ついた。 診察のときに、問診があったので、乳がんの手術をしたばかりだと告げると、先生は驚いて、それは大変だね、という旨のことを言ったけど、でも、自分としては、大変なことは、もう終わったので、そんなに…

乳がん忘備録【38】

手術後の初めての外来のために、病院へ行った。 先生は相変わらず爽やかで、調子はどうですか、と聞かれたので、実は手術後からずっと、右手が痺れているのが気になったので、そのことを言った。 先生は頭を傾げて、時間が経てば治るだろうと言ってくれたけ…

乳がん忘備録【37】

荷物をまとめて看護師さんたちにも挨拶をして、1階に降りた。 日曜日のロビーは、この病院に初めて来たときのように誰もいなくて、静まり返っていたけれど、もう勝手知ったる場所なので、いつもと違う様相が面白いと思った。 土日用の窓口で会計をお願いして…

乳がん忘備録【36】

退院日になった。 退院日はちょうど、日曜日だったので、主治医の先生も、入院時の担当の先生も、挨拶ができないからと、前日のうちに会いに来てくれた。 姉が迎えに来てくれるというので、それまでにベッドの片付けをした。 テレビは、テレビカードを入れて…

乳がん忘備録【35】

転移の有無や、術後の経過によって、入院期間は変わるという話は聞いていて、私は一番なんともなかった場合のコースになったので、入院・手術・退院まで5日間というちょっと慌ただしい感じになった。 でも、点滴も尿管も外してもらえて、普通にご飯も食べて…

乳がん忘備録【34】

やっと朝になって、看護師さんが来た。 昨日手術に迎えに来た看護師さんとも違う人で、看護師さんは私のエコバックを見ると、一目で、私が応援してるグループ名の名前を言ったので、よく知っていますねと言うと、別のグループを応援している人だったので、親…

乳がん忘備録【33】

ベッドの上から動けない状態は、けっこうしんどかった。 左手の甲には、看護師さんや先生たちが格闘して入れた点滴の針がガッチリ刺さっているし、トイレに行かなくてもいいように尿管が入れられているので、どこか座りがよくなかった。 あと、枕の代わりに…

乳がん忘備録【32】

聞こえますかー、終わりましたよー、という声で、ゆっくり、少しずつ覚醒した。 すごい、終わったんだ、ほんとに一瞬だったな、と思いながら、透明なマスクをつけたままの状態で、ありがとうございますと言った。先生が、リンパ節に転移は見当たらなかったで…

乳がん忘備録【31】

先生たちは、私の点滴がついていないことに気づいて、注射の準備に入った。 今度こそ、スっと終わることを期待したけど、やっぱり、入らなかった。ベテランの麻酔の先生が、謝りながら、また刺して、でも無理だったので、みんな困惑していた。注射は手の甲だ…

乳がん忘備録【30】

看護師さんと一緒に、明らかに関係者以外入っちゃいけなそうな、行ったことのないエリアのエレベーターに乗った。急に手術をすることになったことを知った家族が、驚いて慌てて来ないでほしいと思ったので、看護師さんにそのことを伝えた。 エレベーターを降…

乳がん忘備録【29】

私の動揺をよそに、容赦なく、じゃあ準備しましょう、という空気になったので、慌てて姉へ、これから手術室に行きます、と連絡をした。さっきの返事から2分くらいしか経っていなくて、すぐに姉からの、驚いた返信が視界の隅に映ったけれど、返事をするヒマ…

乳がん忘備録【28】

朝になった。看護師さんがおはようございます、と挨拶に来てくれたりした。起床は6時半だけど、朝食もないし、とくに何かやることもないのでヒマになった。 手術は午後からなので、それまで何をしていようかなと思って、こういうときこそ有益なことをしよう…

乳がん忘備録【27】

手術当日は、母と姉が付き添いをしてくれることになった。 家族は何時に来たらいいのかを看護師さんに聞くと、まだ決まってないのでわからないと言われた。前日までわからないなんてことあるんだなと思った。ただ、手術は午後からなので、11時までに来てく…

乳がん忘備録【26】

病室に戻ると、私は軽く行方不明になっていた。一度諸々の検査が終わったら、戻ってこなくてはいけなかったらしく、看護師さんにどこ行ってたんですか、と言われた。いない間に主治医の先生も様子を見に来てくれていたけれど、またあとで来ることになった。 …

乳がん忘備録【25】

いろんな話のなかで、乳がんのステージの話になって、そういえば、ステージっておいくつなんですか?と、出身地を聞くみたいに聞かれたので、私1なんですよ~と返すと、ステージ1なのに、手術するの?と、聞かれた。どういうことなのか聞いてみると、この…

乳がん忘備録【24】

それから看護師さんに言われた順番に検査室を回っていると、だだっ広い、でも静まり返ったフロアにたどり着いた。待合室には2人だけ女性がいて、2人は少し声を抑えながらおしゃべりしていた。知り合いなのかな、とぼんやり思いながら座っていると、1人が…

乳がん忘備録【23】

入院当日になった。旅行用のスーツケースを持って、母と一緒に病院に行った。相変わらず病院は混雑していた。そういえば、このころ、私は酷く、時計や目に飛び込んでくる数字が「4」や「42」をとらえてしまって、不吉なようで、怯えていたけれど、受付で…

乳がん忘備録【22】

入院前日は、ちょっとだけ複雑な案件が来たので、残業をして、ギリギリまで仕事をした。後輩への申し送り事項を書き留めて、上長に挨拶に行くと、また上長がMTG室に誘ってくれたので、お言葉に甘えて話をした。 会話の途中、どういう流れかは忘れたけど、上…

乳がん忘備録【21】

入院日のお知らせは、数日前に突然来ると言われていて、少しそわそわしつつも、大分覚悟はできてきていた。せっかく入院するんだから、少しでも快適に過ごすためになんの準備をしたらいいのか検索したりもして、不安半分、ドキドキ半分だった。そんな12月の…

乳がん忘備録【20】

入院が近づくと、全身麻酔の説明と、入院のオリエンテーション、それから、手術時の輸血についての話がそれぞれ別日にあった。とくに全身麻酔のほうは、今からドキドキで、土壇場になってパニック障害が出てしまったらどうしようと思った。なので、それを言…

乳がん忘備録【19】

手術のだいたいの時期がわかったので、職場の後輩の子たちにガンのことを話した。年内に長めの休みをもらうことは伝えていて、でも、先輩からこんなことを聞かされたら、迷惑だろうなとちょっと思った。2人は少し驚いた顔をしたあとすぐに気を取り直して、…

乳がん忘備録【18】

少しずつ日常を取り戻して行って、どうやらすぐに死ぬわけではないらしいということがわかると、いろんなことが気になるようになってきた。まずはお金のことだった。私は何年か前に保険に入っていて、今まで全然何も考えずに毎月払っていたけれど、そういえ…

乳がん忘備録【17】

そういえばコンサートには結局行った。飛行機を使った一泊二日の遠征だった。告知されたときは、とても行く気にはなれなくて、キャンセルするつもりだったけれど、先生からそういうのは行ったほうがいいと言われたのと、少しずつ日常が戻っていて、なんとか…

乳がん忘備録【16】

ときどき、不安に駆られてどうしようもなくなるので、不安を解消するために、ネットで不安を消す方法とか、気を紛らわせる方法だとかを調べた。仕事中、胸が押し潰されそうなくらい辛い気持ちになったときは、病院の相談支援センターに直接足を運んで、看護…

乳がん忘備録【15】

最初に告知を受けたときみたいに、情報が一度にたくさん入ってきて、でも聞かなきゃいけないことがたくさんある気がして、先生に何か聞こうとしたけど、先生は「ん~もう時間がね~~」と笑顔で言った。1人の患者に、こんなに長く時間をかけるわけにはいか…

乳がん忘備録【14】

受診日になった。病院には、母親が付き添いで一緒に来てくれることになった。 一度行っているので迷うことなく病院に着いた、のだけど、病院に到着して、まず面食らった。人、人、人……人だった。ついこの間行ったときとは、打って変わってロビーは人で溢れて…

乳がん忘備録【13】

次の日、クリニックから電話が来た。病院の初診日の連絡だった。クリニックが決まったときのように、こちらも日にちがすぐ迫っていたので、紹介状は取りに行くことになった。もうできているので、いつでも来ていいと言われ、その日のうちに取りに行くと伝え…

乳がん忘備録【12】

どんなに自分が非常事態に陥っていても、仕事は行かなくてはいけないし、日常は否応なしに肩を叩いてきて、でもそれは、全然嫌なことではなくて、ものすごい、ありがたかった。いつものように会社に行く準備をして、でもまだ食欲はなかったので、朝食は牛乳…

乳がん忘備録【11】

スープ専門店を出ると、駅へ向かう連絡通路は、尋常じゃないくらい混雑していた。 駅に近いとはいえ、この時間にこんなに混むものだったっけ、と、ふと、連絡通路から地上の交差点を眺めてみたら、そこは、テレビでしか見たことのないような人混みで、大変な…

乳がん忘備録【10】

駅を通り過ぎて、レストランが複数並んでいる商業施設に着いた。いろんなお店を通り過ぎて、結局は、何も胃袋に入る気がしない私のリクエストで、スープ専門店に入った。中はちょうど仕事終わりの会社員でいっぱいだったけど、ちょうど2人席があいていて、そ…