貝の隅っこ

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乳がん忘備録【12】

どんなに自分が非常事態に陥っていても、仕事は行かなくてはいけないし、日常は否応なしに肩を叩いてきて、でもそれは、全然嫌なことではなくて、ものすごい、ありがたかった。いつものように会社に行く準備をして、でもまだ食欲はなかったので、朝食は牛乳だけにした。

電車に揺られながら、先生が提示してくれた病院のことを考えた。手術はもちろん、入院も初めてだったので、何を基準に選んだらいいのか、まったくわからなかった。先生は4つに絞ってくれていたけれど、それでもこんなに悩むのだから、選択肢が用意されていなかったらどうだったろうと思った。

4つのうち2つは、私でも知っている有名な病院で、もう2つはガンの専門病院だった。でも、ネットで検索すると、その2つも私が知らないだけで、ガン治療の世界では有名な病院らしかった。いつまでも選べないので、とりあえず、勝手な先入観で3つに絞った。それから、各病院のホームページを開いて、まず入院費用を見に行った。

よく差額ベッド代、という単語を聞くけれど、詳細はよく知らなくて、ホームページにその詳細が乗っていた。大部屋から個室まで、価格には否応なしに貧富の差が出ていて、いっそ清々しいなと思った。でも、どこも有名な病院だけあって、混雑しているらしく、最短可能入院日は約1か月待ちだった。

 

大げさではなく、人生を左右する選択だと思っていたので、真剣に考えた。親の知り合いが、3つのうちの1つの病院に入院していたことがあって、まるでホテルみたいに綺麗でよかったというのを聞いて、そこにしようかなと思ったけど、1泊3万円だったので、怯んだ。ケチるところじゃないし、せっかく初めての入院なんだから贅沢しようと思いつつも、とりあえず候補で保留にして、残り2つも検討した。どちらも有名なだけあって、口コミは良し悪し両方あって、決めきれなかった。クリニックの先生が、検査に通う必要があるから、通いやすいところがいいと思うよ、と言っていたのを思い出して、候補に優先度をつけた。

でも、あと1歩、病院を決定して、クリニックに連絡する、という段になると、どうしても踏ん切りがつかなくて、早く、クリニックに電話しようと思っても、この決定で人生が決まってしまうんだ、みたいにものすごく深刻に考えてしまって、あっという間に夜になっていた。いつまでも決められなくて、会社の近くのコンビニの前でウロウロして、とりあえず、仮でいいから、最終的に他の病院にするかもしれないけど一旦ここにしよう、という気持ちで、病院を決定して、クリニックに電話をすると、受付時間を間違えていて、電話は繋がらなくなっていた。この1日のズレで手遅れになったらどうしよう、となんでも深刻に考える癖がついてしまっていたので、真っ青になって、慌ててメールを送った。メールには、病院をあとから変えることは可能か、ということと、告知されたときには聞けなかった、日常を過ごす上での疑問点とかを書いて送って、少しだけ一息ついた。