貝の隅っこ

話を聞く副業をしています。 初回無料、2回目以降3000円~。詳細は最初の記事にて。

乳がん忘備録【3】

健康診断をしたクリニックは、都内のど真ん中にある、綺麗なところだった。朝行くと、クリニックは、少し前の私のように、健康診断を受診に来た人で溢れかえっていて、行列が部屋の中におさまらないくらいだった。ここにまた並ぶのか……と少しげんなりしたけど、今回は健康診断ではないので、並ぶのはここの窓口でいいのか、ひとまず案内係の人に確認した。すると案内係の人はすぐに、ああ、というリアクションになり、他の人を対応中の一番端の窓口の人に話しかけに行った。その人もすぐに、ピンと来たような顔になって、対応中の人が終わると、すぐ窓口に呼ばれた。なんだか、VIP待遇をされているように感じて、ラッキーだな、という気持ちになった。

今持ってくるので、待合室で座って待っててくださいと言われたので、人が多く座っているところに移動した。これなら早く会社に行けそうだと、いい気分になりながら、携帯をいじって待つことにした。

 

「大至急」

 

受付の人が持ってきた書類には、赤字で大きく、そう書いてあり、ご丁寧に丸までついていた。

ここで初めて、激しい違和感に襲われた。

 

……実は、石灰化自体が、よくないことなんだろうか……。

 

大至急、の文字を凝視しながら、そんなことを考えた。でも、これは、きっと、私の受診日が早かったから、書類処理を早くしなくてはいけなくて、だからそういう申し送りがされているんだと、思った。

一部石灰化してますが、まあ大丈夫でしょう――。「カテゴリー」の意味を調べていなかったそのときの私の支えは、私のほうを見ずに言った、このときの医者の言葉だけだった。

何度もその言葉を頭の中で反芻して、落ち着きを取り戻そうとしたけど、不安は完全には消え去らなかった。

受付の人は、待合室で座っている私の目線に合わせるように屈みながら、色々と書類について説明してくれて、なんだかそれも、私を気遣うように優しくしてくれているようで、ひょっとして自分は今、大変な状況にいるんじゃないか、という気にさせた。書類一式を受け取ると、なんとなく落ち着かない気持ちのまま、会社に向かった。