貝の隅っこ

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乳がん忘備録【4】

再検査は、会社の終業後に行うことになった。

ありがたいことにクリニックは19時までやってくれているので、定時まで仕事をしたあと、時間短縮のために一駅だけ電車に乗って、クリニックに向かった。

表参道にあるクリニックは、駅も近く、さすがオシャレな場所にあるだけあって、中も静かで綺麗なところだった。受付の女性も優しくて美人だった。健康診断を受けたところといい、クリニックの受付の人は、話し方も、所作も、総じて安心感を与える人たちばかりで、いいなあと思った。訪れる人たちが大なり小なり健康に対して不安を感じているだろうから、そういうふうに指導されているのかなと、少し思った。

 

 

再検査はあっさりと終わった。

やることは健康診断のときと同じで、むしろ最近検査をしたばかりだったからか、痛みも少なかった気がした。待合室には、検査を待っている人のために雑誌や本が置かれていて、何か興味のありそうなものはないかと、タイトルを眺めたりした。

ふと、その中の本の、「乳がん」の文字が目に飛び込んできて、どきっとした。ここは、乳腺のクリニックなのだから、あるのは当たり前だったけど、改めて自分が今、なんの検査をしているのかを思い出した。手に取って読もうとして、なんとなく、やめた。

検査なので、普段の受診より少し高めな値段をクレジットカードで支払って外に出ると、再び解放的な気分に浸った。そのころには、朝に心を覆っていた不安はすっかり消え去っていて、ひゃっほうという気持ちのほうが大きくなっていた。そうして、代わり映えのしない、ありふれた日常に戻ることになった。検査結果は次の週だったけど、その間にも、友達と遊ぶ約束があったりして、たいして気にも留めていなかった。