貝の隅っこ

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乳がん忘備録【14】

受診日になった。病院には、母親が付き添いで一緒に来てくれることになった。

一度行っているので迷うことなく病院に着いた、のだけど、病院に到着して、まず面食らった。人、人、人……人だった。ついこの間行ったときとは、打って変わってロビーは人で溢れていて、言い方がふさわしいかどうかわからないけど、人の集まった病院は、本来の機能を如何なく発揮して、賑わっていた。ここはガン専門病院なので、検査の人間もいるだろうけど、ほぼ全員がガン患者なんだろうと思った。行きの電車の中で、この中にガン患者は私だけだろうか、とアンニュイな気分になっていたのに、あまりの人の多さに、目を丸くした。電話で、すみませんガンになっちゃいまして、と、風邪のようなテンションで話している人もいた。

待合室に移動するとそちらも人で溢れていて、通路で看護師さんが座って対応していた。受付には、9時の予約だったのにいつまでたっても呼ばれないんだけど、と言っている人がいた。ちなみに私の予約時間は、その人よりも1時間もあとだったけど、その人は予定があるからと、帰っていった。受付を済まして辺りを見ても、2人分が並んで空いているスペースはなかったので、母とは離れて座った。

 

 

それから、予定の時間より大分遅れて、やっと呼ばれた。この時点で、私と母は、待ちくたびれて、心身ともに疲弊しきっていた。げっそりしながら診察室に入ると、そこには、私と同年代くらいの、優しそうな、好男子先生が座っていた。

そして、先生は、爽やかに、スパルタに、とにかく半端ない情報量を一気に叩き込んできた。なので、結構な時間を割いてもらったと思うのに、ちゃんと覚えているのは「全摘出にするか、部分摘出にするか」のくだりくらいだった。あまりにも軽く話すので、よく考えずに、答えてしまった。

それから今後の検査のスケジュールを伝えられた。健康診断、クリニックと二度、検査をしてきたのに、この病院でも、とにかく一通りまた1から調べなおすとのことだった。が、MRIの話を聞いたときにドキっとした。まだガンの、正確な大きさは、MRIを見てみないとわからないということだった。

ガンのステージはざっくりと、大きさと、転移の有無で決まって、私は早期発見の、ステージ1だと言われていたけれど、その話を聞いて、実はもっと大きくて、もうとっくに身体中に散らばっていたらどうしようと、ものすごい不安に襲われた。というか、こんな悠長にしていていいんだろうか、手術まで1か月以上かかるらしいけれど、もたもたして、その間にガンが進行するということはないんだろうかとか、ガンが身体の中にあるとわかった途端、私は明日にでもとってしまいたい気分になっていた。