乳がん忘備録【5】
もう一度、検査してもいいか。
結果を聞きに行った日、先生は困ったようにそう言った。
パソコン画面には、私のマンモグラフィーの映像が映し出されていて、先生はそれを見せながら、丁寧に、その結論に至った経緯を説明してくれた。シロともとれるし、クロともとれるから、今度は直接細胞をとって、調べたいという。
この日まで、比較的楽天的だった私も、さすがにマズイのでは、という気持ちがじわじわしてきた。どっちに転ぶかわからない、つまり先生、それって、二分の一ってことですか。
先生から、どうしますか?と聞かれたけれど、私に選択権はなかった。そんな爆弾を抱えたまま日常に戻るなんて、不可能だと思った。
細胞をとるための施術は、胸に長い特殊な針を刺して、そこからバチン、と細胞をもぎ取るということだった。想像以上にアナログな手段で、聞いているだけで胸が痛くなった。お会計をしていると、ふと、検査の結果がクロだった場合は、検査費用も医療費控除の対象になるんだっけ、と前年勉強したばかりの知識がよぎった。知識としては知っていても、自分に関わるなんて考えもしてなかったことだった。だから、医療費控除の対象に、ならなくていいと思った。
形ばかりの同意書を鞄にしまって、このときだけは暗澹たる気持ちになりながら、会社へと戻った。
ちなみに私の検査の進捗は、検査のために早退する必要があったので上長にだけは伝えていて、後輩の2人には、「ちょっと検査してて」くらいのニュアンスしか伝えていなかった。上長には笑いながら「結果が超怖いんですけど」と言った。笑いながら言うと、まあ大丈夫かな、という気になった。
また、家族にも伝えた。再検査になったと旨を伝えると少し驚いて、心配していた。