貝の隅っこ

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乳がん忘備録【18】

少しずつ日常を取り戻して行って、どうやらすぐに死ぬわけではないらしいということがわかると、いろんなことが気になるようになってきた。まずはお金のことだった。私は何年か前に保険に入っていて、今まで全然何も考えずに毎月払っていたけれど、そういえば私の入っているプランだと入院と手術でいくらもらえるのだろう、ということが気になって保険会社に電話をかけた。電話口の女性は丁寧に応対してくれて、私が当事者だとわかると、病気のお見舞いの言葉をくれた。そして保険金額は、自分で計算していた額よりもはるかに高かったので、毎月一定額を払っていたとはいえ、ちょっと得した気分になれたので、よかったと思った。

それから、入院と手術代金が高額にならないように、会社の休み時間に、健康保険の事務所に限度額認定証を取りに行った。これがあれば、所得に応じて入院・手術代が一定額以上にならないようにしてくれるらしいので、なんとなく聞いたことはあったけれど、いざ自分が利用する立場になると、本当に有難い制度だなと思った。

約ひと月かけて、仕事の合間に、病院と職場の往復を繰り返して一通りの検査が終わったので、主治医の先生の診察になった。MRIの結果、ガンは、予想されていたより、少し大きかったけど、ステージは変わらなかった。入院は病院のベッドの空き次第で、でも、おそらく年内だということだった。ちなみにベッドは、最初は個室を希望していたけれど、最終的に値段の高さに日和って、結局2人部屋を第一希望にした。

それから、ずっと気になっていたこと、ガンが、自分の中にいつからいたのかということを、先生に聞いてみた。

去年検査しても見つからなかったのに、今年の検査で引っ掛かったのは、ガンがやっと見つかるだけの大きさになったから、と言われていた。だから、ガンが発生した時期を知れば、どうして自分がガンになったのか、わかるかなと思った。乳がんになった原因は、最初の診察でも聞いていて、そのときも理由はわからないと言われてたけど、じゃあせめて、なった時期がわかれば、手がかりが得られて、なんで自分がガンになったのか、とか、何がいけなかったのか、とか悩むこともなくなるし、バチが当たったんだと自分を責めることもなくなるかなと思った。でも先生は、「そうですねぇ、6、7年前くらいからですかねぇ」と、あっけらかんとそう言ったので、その言葉に、なんだか色々諦めがついた。結局、知らなかっただけで、気づかなかっただけで、私はとっくの昔からガンだった。