貝の隅っこ

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乳がん忘備録【29】

私の動揺をよそに、容赦なく、じゃあ準備しましょう、という空気になったので、慌てて姉へ、これから手術室に行きます、と連絡をした。さっきの返事から2分くらいしか経っていなくて、すぐに姉からの、驚いた返信が視界の隅に映ったけれど、返事をするヒマもなく、着圧ソックスを足にフィットさせるために引っ張った。

 

次は点滴になった。点滴は、採血の注射より太くて、でも私の血管は細いので、なかなか血管に刺さらなかった。ちなみにめちゃめちゃ痛かった。痛みから気を紛らわせるために、少しでも動揺を落ち着かせるために、手術は午後と聞いていたけれど、急に変更になったんですか?と聞くと、なくなったんですと看護師さんが言ったので、亡くなった?とオウム返しに聞き返した。看護師さんは、手術がなくなったんですよ、と言い直して、日本語って難しいなと思った。

 

また針を刺して、でも、やっぱり血管に入らなかった。とても痛くて、さらにまだ、心の準備もできていないから動揺は続いていて、付き添いもいなくて、慌ただしくて、こんなドタバタな状態で初めての手術を迎えることになって、ついに涙が出てきた。看護師さんは、注射がうまくいかないことをしきりに謝ってくれたけど、そうだけど、そうじゃなかった。

 

別の看護師さんもやってきて、また刺して、やっぱりうまくいかなかった。手術室で、先生たちが待っているらしく、看護師さんも困っていた。それから、先生たちを待たせるわけにはいかないので、とりあえず手術室に行って、先生にやってもらいましょうということになって、それでいいんだと思った。