貝の隅っこ

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乳がん忘備録【30】

看護師さんと一緒に、明らかに関係者以外入っちゃいけなそうな、行ったことのないエリアのエレベーターに乗った。急に手術をすることになったことを知った家族が、驚いて慌てて来ないでほしいと思ったので、看護師さんにそのことを伝えた。

 

エレベーターを降りて、長い廊下が目の前に広がって、学校の教室みたいに、手術室の扉が並んでいて、それは全部中が見えるようにガラス張りになっていて、こんなふうになってるんだ~と思った。少し歩いたところに、青い手術着を着た数人の人だかりができていて、看護師さんはまっすぐそこに向かった。

 

こんにちは、と明るく和やかに手術着を着た人たちに迎えられたのを確認すると、看護師さんは去っていった。患者さんの取り違えがないように、名前を聞かれたので、声だけは元気に言った。マスクでよくわからなかったけれど、数人の手術着の人たちの中には、いつものさわやかな主治医の先生もいて、死にそうなくらい緊張している私とは対照的に、みんなにこやかで、笑顔だった。

 

病室で泣いてきたので、いきなり泣き出すかもしれないですけど、もう挨拶みたいになっているので、気にしないでもらえると嬉しいですと言うと、周りの人たちより少し背の低い女性が緊張してますか、と聞いてきた。

もちろんです、と言って、何が緊張しますか?と聞かれたので、麻酔とかで目が覚めなかったらどうしようって思ったりします、と言うと「私が麻酔を担当した患者さんの中で、目覚めなかった患者さんはいないですよ」と、ベテランを思わせる心強いセリフを言われたので、かっこいいと思った。

 

部屋の真ん中には手術台がぽつんとあって、周りにはいろいろな器具や、機材が置いてあって、テレビやドラマでしか見たことのない空間だった。もっと狭くて、暗い部屋を想像していたので、広くて、明るくて、なんだか変な感じだった。

手術台は高いところにあって、上るのに台を使った。この広い部屋と、各分野のプロフェッショナルな先生たちと、私一人のために、これだけの手間や工数がかかっていることが、とても贅沢なことで、それなのに医療費は、限度額認定証のおかげでそんなに高くなくて済むので、すごいなあと思った。